当時つき合っていた彼女(妻)と暮らすようなり、ひとり暮らしでは味わえなかったことがたくさんありました。
一緒に料理をして、ご飯を食べて、テレビを見て笑う。肩を寄せ合って寝る。珈琲を飲みながらベランダのミニサボテンを眺める。全部がふたり。ひとりではしなかった料理も、ふたりなら楽しい。「ほら、猫の手しなくちゃ危ないよ~」と、彼女。全部が楽しい。
そんな日常を過ごしていくうち、ちゃんとした調理道具を揃えたいと考えるようになりました。きっと彼女とこれからもずっと暮らしていくと思ったからです。
僕が調理道具に求めるものは、多機能ではなくシンプルな構造で頑丈なもの。そんな道具。
まず最初に買ったのが、この工房アイザワのおろし金でした。
純粋におろすためだけの単純な形。おろし目が立っているので、とてもおろしやすいし、力もあまり必要ない。ためしに力を込めて使っても曲がる気配すらない。これまで使っていた樹脂製のおろし金は何だったんだっていうくらいに、すべてが段違い。僕が求めていた道具は、まさにこういうもの。
1922年創業の工房アイザワ。新潟燕三条のモノづくりを見せつけられた、道具屋がつくるおろし金なのでした。
一点だけご注意を。普通のスポンジで洗うと普通にスポンジをおろします。なので、たわしを使ってくださいね。
写真撮影:ハマ