北欧のグラフィックデザインを語る上では欠かせない『Come to Finland(カムトゥフィンランド)』のポスターを特集しています。巨匠グラフィックデザイナー・Erik Bruun(エリック・ブルーン)の作品を中心に、フィンランドのさまざまなアーティストによる名作ポスターを厳選。レトロでおしゃれなデザインの気軽に飾れる北欧アートを体験してください。
すべて見るThe Crayfish season(ザリガニパーティー)
The umbrella boy(アンブレラボーイ)
Come to Finland(カムトゥフィンランド)とは?
1900年初頭から1960年代頃までにフィンランドで旅行広告用としてつくられたポスターたち。フィンランドの名所や文化が、さまざまな技法・色彩・アイデアで描かれました。それらの作品はヴィンテージポスターとして高い評価を得ており、現在でも多くのファンに愛されている北欧アートとして知られています。
『Come to Finland(カムトゥフィンランド)』は、そのようなポスターに着目したフィンランドのジャーナリスト・Magnus Londen(マグヌス・ロンデン)が設立したブランド。フィンランドのデザイン史に残る数々の名作を復刻しながら、現代のアーティストたちの作品も展開しています。
Erik Bruun(エリック・ブルーン)のポスター
Erik Bruun(エリック・ブルーン)はフィンランドを代表するグラフィックアーティスト。広告ポスターをはじめ、さまざまな分野でフィンランドのデザイン界に貢献している巨匠デザイナーです。動物や植物などの自然をモチーフにした、大胆かつ繊細なオリジナリティあふれる作品で知られています。紙幣・切手・航空会社などだけでなく、国民的な飲料水「Jaffa(ヤッファ)」のポスターを手掛けるなど、フィンランドの暮らしに深く関わったデザインを残しているグラフィックデザイナーです。
カムトゥフィンランドではエリック・ブルーンがデザインしたポスターも多く扱っています。それは随所にフィンランドの魅力が盛り込まれた北欧デザイン。まずは、フィンランドのグラフィックアート界を代表するエリックの作品を紹介していきましょう。
大聖堂や倉庫の町並み。Porvoo(ポルボー)
出典元:rakuten.co.jp
フィンランドでも2番目に古い街と言われる、ポルボー市の観光局から依頼を受けて1980年代に描かれた作品です。ブルーンはこの歴史ある街並みを何度も歩いたそうです。400年代に建てられた大聖堂と、河岸に並んでいる昔ながらの倉庫を入れたデザインでボルボーという街を表現しました。本来はカラー版でしたが、モノトーンのようなデザインのものはブルーンが個人用に数枚だけ印刷所に頼みこんだもので、特別なバージョンとなっています。
楽しいパーティーのはじまり!The Crayfish season(ザリガニパーティー)
出典元:rakuten.co.jp
フィンランドでポピュラーな「ザリガニパーティー」をモチーフにしたポスターです。1950年代にフィンランドの観光局からの依頼によりデザインされました。デフォルメされたユニークなザリガニをはじめ、切り紙遊びのような遊び心ある雰囲気の楽しいデザインになっています。シュナップやディルと呼ばれる蒸留酒や、首の白いナプキンはパーティーを楽しむ人々に不可欠なモチーフです。開催時期の8月頃に白夜から夜が暗くなることを背景の黒で表し、対象的なザリガニの赤がインパクトのある作品となっています。
ヘルシンキの町と海。Helsinki(ヘルシンキ)
出典元:rakuten.co.jp
ブラック・ブルー・シルバーのカラーでフィンランドの首都・ヘルシンキを描いた1950年代のポスターです。大聖堂やヘルシンキを代表する特長的な建築物がモチーフになっています。一見シンプルに見えるデザインですが、街全体を上から見下ろす視点が非常にユニーク。構図もどこか幾何学的な洗練された印象です。この表現は後世の多くのアーティストたちにインスピレーションを与えた、スタイリッシュでモダンなデザインとされています。
緻密なデザインの大聖堂。Turku(トゥルク)
出典元:rakuten.co.jp
1966年にフィンランド南西部の街・トゥルクで開催されたコンテストに出品されたポスターです。トゥルクはフィンランド最古の街と言われ、ブルーンのモチーフに選ばれたトゥルク大聖堂は街のシンボルとされる建物です。手で描いたとは思えないほど緻密に描かれており、大聖堂が深みのある存在感が漂っています。ブルーンの細やかな技法と、トゥルクの歴史と文化が融合したかのような美しい作品となっています。
展望台から眺める人びと。Aulanko(アウランコ)
出典元:rakuten.co.jp
アウランコ自然保護区は、100年以上の人気を持つ観光地で、フィンランドの重要な建物と文化の歴史があります。このポスターは、アウランコのリゾートホテルからの依頼で描かれた作品です。たくさんの観光客が展望台からカメラや望遠鏡を楽しそうにのぞいています。デフォルメされた塔とカラフルに塗られた人々のコントラストが秀逸。色彩をアクセントにした躍動感のあるポスターです。
入荷待ち
合併を祝して。The Buffet(サーモンボート)
出典元:rakuten.co.jp
煙突を模した葉巻が表すのは「株式会社ボーレ(Bore)」「ストックホルム運送船会社(Svea)」「フィンランド蒸気船株式会社(FÅA)」の3つの船会社。1957年にこの3社が合併し「シリア株式会社(Silja)」が設立されました。サーモンやエビ、ラディッシュなどが表すのは豪華なスモーガスボード。スモーガスボードとは並べられた皿から各自の好みで料理を取り分ける、ビュッフェ形式のスカンジナビア料理のことです。豪華な料理を船体に見立てたり、葉巻を煙突にしたりと、ユーモアと豪快さが同居した作品となっています。
フィンランドに行きたくなるCome to Finlandの観光ポスターたち
ヘルシンキ誕生400周年記念。Helsingfors(ヘルシンフォシュ)
出典元:rakuten.co.jp
フィンランドの首都ヘルシンキの誕生から400年を記念したポスターです。1550年、グスタフ1世によって創建されたヘルシンキは貧困、戦争、災害といった様々な困難に合い都市としての成長に苦しんできました。それを乗り越えて迎えた1950年を祝う、特別なポスターとして大賞を受賞したのが、Gunnar Forsstrom(グンナル・フォシュストレーム)による輝く花火のデザインでした。輝きながら長く伸びる花火が過去と未来を表すような、記念日にふさわしいデザインです。
幻の1枚。Helsinki Sea gull(ヘルシンキ・カモメ)
出典元:rakuten.co.jp
ヘルシンキの400周年記念ポスターに作品が選ばれたフォシュストレーム。実は受賞作品とは別のパターンとして4枚のデザインを用意しており、その内の希少な1枚です。カモメたちがヘルシンキの港の空を羽ばたいている姿を描いています。船にはフィンランドの国旗が掲げられており、街のランドマークであるヘルシンキ大聖堂が背景に見えます。この作品が当時どこまで人の目に触れていたのかは分かりませんが、半世紀の時を経て、ポスターとして世に出る形となりました。
入荷待ち
あのデザイナーが作りました。Land of Romance(ロマンスの国)
出典元:rakuten.co.jp
「ロマンスの国、フィンランド」という素敵なスローガンが記されたこの作品。千の湖の国とも呼ばれるフィンランドは、文字通り無数にある湖と美しい自然がその魅力の1つです。その豊かな風景にゆったりと船が入っていく様子が印象的。デザイナーはHelge Mether-Borgström(ヘルゴ・メテル・ボルグストローム)。『marimekko(マリメッコ)』の創始者アルミ・ラティアと友人であり、1954年にはマリメッコのロゴをデザインしている人物です。
サインにまつわるエピソード。The Seamaid(マーメイド)
出典元:rakuten.co.jp
1952年にフィンランド蒸気船株式会社(FÅA)のポスターとして、Albert Andersson(アルバート・アンダーソン)により描かれたマーメイドのポスター。実は長く作者が不明でした。「ABBE」というサインを頼りにインターネット上で質問したところ、1年後にアンダーソンの娘から書き込みがあったことで作者が判明します。アンダーソンはアトリエの屋根から実際に生の魚をつるし、鱗の光を観察しながらデザインを完成させました。また、乳首の色が挑発的として依頼主からクレームを受け、修正してOKをもらっていたものの、イメージが決まっていた作者は印刷前に色を元に戻してしまったそう。作者の強いこだわりの色を見ることができるポスターです。
青い空を飛ぶ飛行機。Aero(アエロ)
出典元:rakuten.co.jp
1930年代に最も称賛されたフィンランドのグラフィックデザイナーの1人であるJorma Suhonen(ヨルマ・スホネン)。1933年に行われたスカンジナビア航空主催のポスターコンクールに出品し、初めて賞を受賞した作品です。AERO航空(現フィンランド航空)の広告として作られました。当時世界の航空会社で使われていた、ドイツ・ユンカース社のJu52/3mがヘルシンキの大聖堂の上を横切るという、非常に大胆な構図で描かれています。この時代ヘルシンキではいわゆる飛行場というものは一般的ではなく、海岸に浮かんだ舟橋から飛んでいました。飛行機の運用開始から数年で北郊外マルミに初めての飛行場がオープンしました。センセーショナルな発展を象徴するような、力強いポスターです。
レアな男の子。The umbrella boy(アンブレラボーイ)
出典元:rakuten.co.jp
オスモ・オクサネンによるデザインの『アンブレラボーイ』です。同作者で最も有名な作品は冬バージョンの『スキーボーイ』。娘であるマリ・オクサネンを庭に立たせ、スキー板とオクサネン夫人の化粧バッグを持たせてデッサンを行いました。それを同じ構図で夏バージョンにしたものがこのアンブレラボーイです。両者を比較すると印刷部数が圧倒的に少なく、非常に珍しいレアなバージョンです。雨が多いというフィンランドの夏を象徴するように、男の子は手に傘を持っています。
存在感のあるポスターでインテリアを北欧に
今回ご紹介したポスターは全てB2サイズ(50×70cm)。映画のポスターによく見られる大きさです。ポスターとしては比較的ポピュラーなサイズですが、壁に飾ると確かな存在感を放ちます。ソファやベッドなど大きな家具との相性は抜群。広さのある場所なら複数飾るのもおすすめです。カムトゥフィンランドのポスターでお部屋に北欧のエッセンスを取り入れてみてはいかがでしょうか。
TOP画像:rakuten.co.jp