いまからおよそ20年前。それは僕が中学生時代のお話でございます。
その頃の僕といったら、なにせ思春期まっただ中ですから、母の言うことなすことすべてが気に入らない。「うるせーよ!」「だまってろよ!」「●●●●●ー!」などと、いま思えば本当に土下座したくなるほどの罵詈雑言を母に浴びせていました。
このように、我が家ではお殿様のように振る舞っていても、中学校に行けば僕はただの男子生徒。カースト的には中の下あたりの普通にダサいヤツだったわけです。でもダサい僕だっておしゃれには興味がある。関心がある。女子にモテたくて仕方ないわけです。
そこで手を出したのが、資生堂『GERAID(ジェレイド)』のヘアワックスと眉毛キットでした。ウルフルズ出演のかっこいいCMも話題になりましたよね。
その当時は、ワックスを使って無造作ヘアにしたり、男子も眉毛を綺麗に整えたりするのが「イケてる男」の証。もちろん僕もイケてる男に憧れ、誰もいない夕方の洗面所で、こっそり練習するわけです。
ワックスを頭に撫でつけてみる。あれ?くせっ毛がさらにモジャモジャになっちゃったよ?
眉毛をコームでとかして眉カットバサミで切ってみる。あれ?モジャモジャな眉毛がただ短くなっただけだよ?
ああでもないこうでもないと試行錯誤を繰り返していると、なんということでしょう。母、帰宅。母、目撃。そして母、怒号。
「あんた何やってるの!そんなくだらないことしてないで勉強しなさい!」
イタいところを見られてしまった恥ずかしさ、母に怒られた苛立ち、まったくカッコよくならない情けなさ、さまざまな感情が重なり合い、まじりっけなしのピュアで純粋な暴言を母に吐いてしまうのでした。
こんな僕の昔話はさておき、20年以上前に買ったジェレイド眉毛キットのはなし。そのキットのなかでハサミだけがなぜかまだ手元に残っています。切れ味も悪くなっていないし、使い勝手も別に悪くない。特に買い換える理由もないので、いまでもずっと使い続けているのです。
そう、じつはこのキットいまでも販売されています。しかもデザインも当時のままという、20年選手のロングライフなのです。
こういう隠れたロングセラー商品って、もしかしたら身の回りに結構あるのかもしれません。家の中を物色したら、こんなお宝がもっと隠れているかもしれないなぁと思ったのでした。
ちなみに、現在のこのハサミの用途ですが、僕は鼻毛カッターとして使い、妻は眉毛を整えるために使っています。妻が洗面所で真剣な顔をして眉毛を切っている姿を見ていると、少しだけ後ろめたい気持ちになります。
写真撮影:ハマ