消耗品と考えられがちなフッ素樹脂加工のフライパンですが、スキャンパンは「消耗品ではなく、長く愛用してもらえるフライパン」だといいます。
今回は、スキャンパン日本総代理店「エスアンドケー株式会社」の足立さんに、スキャンパンのこだわりについて詳しくお聞きしました。
- 2021/06/01 保証交換に関する記述を一部修正しました。
デンマークの老舗ブランド「スキャンパン(SCANPAN)」とは?
スキャンパン(SCANPAN)は、デンマーク第2の都市オーフスで1956年に創業しました。最初はキッチンシンクの製造を行っていましたが、のちにアルミニウムの圧縮鍛造技術を活かした調理器具の製造を行うようになり、スキャンパンブランドが誕生します。現在では世界40ヶ所で販売されている、老舗の調理器具ブランドです。
スキャンパンが日本に進出したのは10年前
※記事執筆時は2018年
「スキャンパンの取り扱いを始めて今年で10年目になります。それまでは日本での取り扱いはなかったので、スキャンパンが日本での展開を開始したのは私どもが初めてということになります」
創業60年以上なのに、日本ではまだ10年しか経っていないんですね。
「もちろんスキャンパンも以前から日本に進出したかったようですが、スキャンパンをしっかり広めてくれるような会社がなかなか見つからず出遅れていました」
足立さんのほかにも取り扱いを希望していた会社はいくつかありましたが、アジア本社のあるシンガポールのマーケティングマネージャーまで会いに行くなど、足立さんの熱意が功を奏し、日本での取り扱いの権利を得ることができたそうです。
徹底した安全への配慮
なぜスキャンパンを取り扱おうと思ったのでしょうか?
「まず第一に、スキャンパンの製品が優れているということです。調理器具としての性能はもちろんですが、安全性や環境についての姿勢にも共感したからです」
安全性について具体的にお願いします。
「従来のフッ素樹脂加工では、ボディとコーティングをくっつける『つなぎ』として、PFOAという化学物質が使われています。このPFOAは最終的に熱処理で飛ばしているので、製品を検査してもその成分は出てきません。
しかし、空焚きしてしまったり、経年劣化でコーティングが剥がれた状態だと、フライパンを温めた際にPFOAが気化して放出してしまう可能性があります。このPFOAには発ガン性の問題があるとして欧米では禁止される動きになっています。
スキャンパンでは、ずいぶん前からPFOAを使わないフッ素樹脂というものを研究していて、2007年に世界で初めてPFOAを使わない次世代のフッ素樹脂加工『GREEN TEK』を製品化できるようになりました。いまでもPFOAを一切使っていないメーカーは珍しいと思います」
足立さんは以前、産業系メーカーで水処理に関する仕事をされていました。工場では使用する薬品の成分について非常にシビアだったこともあり、一般家庭で使われているフッ素樹脂加工のフライパンにPFOAが入っていることを知って驚いたといいます。そして、PFOAフリーのフライパンを探していたところ、スキャンパンに出会ったそうです。
北欧デンマークらしい環境問題への姿勢
環境問題への取り組みも教えてください。
「スキャンパンの製品に使用するアルミニウムは、すべてリサイクルされたものを使っています。新しいアルミニウムで作ることに比べて、90パーセントも資源を削減することができます。
また、長持ちするフライパンは買い替え頻度が減るので、この点でも省エネルギーになります。
PFOAフリーのこともそうですが、このような安全性や環境問題への取り組みや、長く使えるモノづくりといった考え方は、デンマークならではだと思いますね」
熱ムラがないから美味しく調理できる
それでは、スキャンパンのフライパンの特徴を教えてください。
「まずは熱ムラがないことですね。フライパン全体に熱を均一に分散するためには、ボディの厚みが大切です。薄いと熱が当たっているところだけが熱くなり、周囲にまで熱が広がりません。これが熱ムラの原因になります」
「スキャンパンのフライパンは、アルミニウムを660℃で溶かし、250トンの圧力で押し固めています。スキャンパンのフライパンは見た目は薄いですが、実際は見かけより3倍の厚みでできています。この密度の高いボディによって熱ムラをなくしています。
また、高い圧力をかけることで、金属に含まれる微かな気泡を取り除くことができ、より均一なボディに仕上げています。この高密度アルミボディは、スキャンパンが昔から行っている特徴的な作り方です」
250トンってすごいですね。
「調理器具でここまでのプレス機を使って製造しているところは他にないと思います。熱ムラがあると食材を混ぜて調理することになりますが、スキャンパンはあまり混ぜずに調理できるので、時短にもつながります。調理時間が短いことで、水が出にくくなり、旨味や栄養素も流れ出しづらくなるため、より美味しく作ることができます」
熱ムラがないというのが実感できる料理はありますか?
「お客様のご意見をうかがっていると、やはりオムレツなどの卵料理を作ったときに驚かれているようです。また、餃子はフライパンに敷き詰めて焼くことが多いので、全体的に焼き目がつくと好評ですね」
フッ素樹脂加工なのに金属のヘラも使える
やはり驚いたのは、フッ素樹脂加工なのに金属製のターナーも使えることです。
「これは特許技術の特殊なセラミックチタン加工によるものです。3万℃で溶かしたチタンを、アルミの表面に音速の2倍の速さで均一に放射します。この加工によって、アルミのボディがセラミックチタンで覆われ、鉄の10倍もの硬さになります」
「3万℃」とか「音速の2倍」とか、フライパンを作っているとは思えない単位です。
「セラミックチタンの断面は山脈のように凸凹になっています。このくぼみの部分にフッ素樹脂を埋め込むことで、頑丈なセラミックチタンにフッ素樹脂が守られ、効果を発揮し続けることができます。表面に傷が付くことがあっても、フッ素樹脂が剥がれるということはありません。ターナーなどの金属のヘラを使ってもまったく問題ありません」
足立さんがデンマークの工場へ見学に行ったとき、ほとんどの作業工程はしっかり見せてもらうことができましたが、このセラミックチタン加工の工程だけは、小さな窓からしか見ることができなかったそうです。それだけ大切に守られている技術だと足立さんはいいます。
熱いうちに水洗いできるフライパン
フッ素樹脂加工のフライパンは、熱いうちに洗ってはいけない印象があります。
「従来のフッ素樹脂加工は、急激な温度差に弱く、コーティングが剥がれてしまうため、使用後すぐに水で流すことができませんでした。
スキャンパンのフッ素樹脂加工は一般的なものと構造が全く違います。熱々のままで水に入れても大丈夫です。フライパンが熱いうちに洗えるので、汚れが落としやすいメリットもあります」
フッ素樹脂加工の剥がれも10年保証の対象
コーティングの剥がれにも10年保証が付いているんですね。
「コーティングの剥がれや摩耗にも保証を付けているのは珍しいと思います。スキャンパン製品の特性上、再コーティングはできないので、新品と交換させていただいております。
「スキャンパン製品の保証は、製品不良及び構成素材の欠落、製造元であるデンマーク スキャンパン社によって設定された、コーティングの剥がれ・摩耗が対象となります」
アマゾンや楽天などのECサイトで買っても保証されるのでしょうか?
「弊社が取引している問屋さん経由であれば保証の対象になります。アマゾンさんの場合、カートに入れる前に国内正規品かどうか確認してください。並行輸入品では弊社の保証はお受け付けできません。楽天さんの場合は、スキャンパンのオフィシャルサイトがあるので、そちらからご購入いただくのが確実です」
ニーズに合わせたラインアップ
シリーズ展開がいくつかあります。代表的な3つのシリーズそれぞれの特徴を教えてください。
Classicシリーズ
「直火で使うなら、スキャンパンで一番歴史が長い、定番のクラシックシリーズがおすすめです」
「クラシックシリーズはフライパンやソテーパン、グリルパンやダッチオーブンなど全30アイテムがラインアップされています。耐熱260℃なのでオーブンでの調理も可能です」
IQシリーズ
「IHでご利用になるなら、こちらのIQシリーズですね。基本性能はクラシックシリーズと同じですが、底にステンレスを入れてIHに対応しています。一般的なIH対応フライパンの多くは、完成後のボディにステンレスを圧着して作っていますが、これだと空気の層ができてしまい、熱効率が悪くなってしまうんです。
スキャンパンでは、金型にステンレスを入れた後にアルミを流して作っています。この作り方によって空気の層はほぼできなくなり、IHでもムラなく調理することができます。このクオリティにするまでに10年かかりました」
「IQシリーズはIH・直火・オーブンの熱源に対応しています。IHコンロの性能を最大限に発揮できるこのシリーズをぜひ実感してもらいたいですね」
CTXシリーズ
「CTXシリーズは、製造にとても手間がかかる7層構造のボディが特徴です。スキャンパンの技術のすべてを注ぎ込んだフラッグシップシリーズですね」
「CTXシリーズはスキャンパンが考え抜いた多層鍋シリーズです。デザインも妥協していませんので、おしゃれなキッチンにもおすすめです」
最初に買うなら20センチのフライパンがおすすめ
最初に買うならどれを選べばいいのでしょうか?
「20センチのフライパンはちょっとしたときにすぐに使えるのでおすすめですね。それぞれのシリーズのなかでも価格的に安めですし、重さも気にならないと思うので、試していただくならまず20センチの小さいフライパンがいいと思います」
長く使うためのお手入れ方法や注意点
長く使うためにはお手入れが重要とのことですが、ポイントを教えてください。
「焦げ付いたというお客様のフライパンを見てみると、汚れが固着している場合がほとんどです。コーティングの性能を充分に発揮するためには、調理後に汚れをしっかり落としてください。
やはり、フッ素樹脂加工のフライパンということで、みなさんコーティングを剥がさないようについ優しく洗いがちですが、スキャンパンは洗う力程度では問題ありません。安心してスポンジの硬い面と食器用洗剤を使ってゴシゴシ洗ってください」
スポンジの硬い面も使えるんですね。汚れが取れたとわかる目安はありますか?
「目に見えない油汚れは特に溜まりやすいので、お皿のように指でこすってキュキュっと鳴るくらいまでになれば、綺麗になった目安です」
料理が完成したら、片付けは後回しにして、すぐに食べたいという方もいると思います。
「フライパンが乾いてしまうと汚れが落としにくくなってしまうので、とりあえず水で流してください。もしくは、コップ一杯の水を注いでおくことでも大丈夫です。油をたくさん使って調理した後は、中性洗剤を入れて水に浸しておけば、より汚れが取りやすくなります」
汚れがこびり付いて取れない場合はどうしたらいいでしょうか?
「フライパンに水と重曹を入れて、沸騰させて流した後に、スポンジの硬い面と中性洗剤でしっかり洗ってください。ただ、激しいこびり付きを洗い落とそうとすると摩耗の原因になりますので、やはり調理後のお手入れをしっかりやっていただくのが、長く使うコツですね」
「せっかくスキャンパンを買ってくださったのに、汚れが残ったまま使い続けるのはもったいないと思います。お手入れをしっかりしていただいてスキャンパンの良さを体感し続けてもらいたいと思っているので、変な話ですが、洗いすぎて摩耗したというお客様がいらしたら、喜んでお取り替えさせていただきます」
スキャンパンのこだわり
編集部でもスキャンパンのフライパンを使っているスタッフがいるので話を聞いてみると「とにかく焦げ付かないし、金属のターナーを使えるのが嬉しい」「小さな子供がいるので安全なフライパンというのは安心感がある」「スキャンパンがあまりにも手軽で、鉄フライパンの出番が減ってきた」とのこと。おおむね、次世代フッ素樹脂加工の使いやすさとPFOAフリーの安全性が好評でした。
スキャンパンをお求めになるお客様の多くは、安全なフライパンを探していた方だといいます。足立さんに実際にお話をお聞きして、スキャンパンに対する自信と、安全な製品を広めたいという強い思いが伝わってきました。
スキャンパン公式サイト画像提供:SCANPAN